勉強ってね・・・

新年度を迎えて匠太も小学校4年生になりました。新しい担任の先生、クラスメイトそして新しい教科書。なんとなくウキウキしているのが感じられます。
今日、匠太が漢字の勉強をしているときに・・・
「パパ、恒星ってなに?」
ってな質問を受けた訳です。ほい来た。俺の専門分野(?)ですからね。まずは一般論として太陽と同じように自らが光ることの出来る星で夜空に見える星の多くが恒星なんだよ。ってな話をした訳です。
折角、興味を持ったんだから・・・
太陽と惑星、惑星と衛星、太陽系と天の川銀河、さらには多くの銀河系の話しまで広がって行きます。
さらに恒星の種類となると、白色矮星から赤色巨星、ブラックホールまで・・・惑星ならば地球型か木星型か・・・
地球と月までの距離、地球と太陽までの距離、地球と一番近い恒星までの距離・・・
ここで小3のときに学校で勉強した長さの単位の話しになる訳です。mを1,000倍すればKm、地球と月までの距離は約38万Km、地球と太陽の距離は約1億5000万Km・・・
でも、惑星の間の距離を表すのにKmじゃ数字が大きくなり過ぎるよね?SI単位系で言えばMmやGm、Tmなんてのもある訳ですがピンと来ない・・・
だから、地球と太陽の距離を惑星間の長さを表す単位にしようって事になったんだ。
1天文単位(AU)=1億4959万7870Km
どうやって測ったんだろ?二等辺三角形は辺の長さが等しいという約束があるから、太陽の見える微妙な角度の違いを測ると長さを計算出来るんだよ。
恒星の距離も同じように測れるんだけど、天文単位でも大きさが足りないから、光が1年間に進む距離を1光年として、恒星間の長さの単位にしているんだ。
光は1秒間に地球を約7周半、30万Kmも進むことが出来るんだ。それを1年掛けて進んだ距離なんだから、すごく長い距離だよね。
太陽系から最も近い恒星はαケンタウリの4.3光年。だから、一番近い星の光も実は4年以上前の光を見ているんだ。太陽だって約8分前の光を見ているんだよ。
今、見えている星のほとんどがパパやママ、おじいちゃんやおばあちゃん、そのまたおじいちゃんやおばあちゃんが生きていた時代よりずっと前の光を見ているんだ。
不思議だよね?
今度、土星の輪が見てみたい?パパが作った望遠鏡で見られるよ。よく目を凝らしてじっと見ないと見えないかもしれないけど、パパはちゃんと見えたよ。
いつ見られるか?土星は惑星だから決まった位置にいつもいる訳じゃないんだ。地球と太陽、土星の軌道からどの位置に見えるか計算することが出来るんだけどね・・・
な~んて話しをしてました。
これってね。生きていく上で必要な知識なんてひとつもないんですよ。でも、この話しの中には三角関数、球面三角、楕円の離芯率、ドップラー効果、などなど数学的に解説、解決できるものがたくさんあります。
実際に軌道計算をしようと思えば、行列や方程式と言ったことの基礎知識も当然必要になって来ます。
高校や大学って何のために行くの?今や大学を出たって理想の就職先に勤められるかなんて分かりません。
「高校数学なんて社会に出て意味ないよ。」
確かに多くの場合に意味はないです。でも、自分の知的好奇心を満たす助けにはなってるじゃない。意味のない知識こそ本当はないんですよ。自分が出来なければ誰かがやってくれるじゃダメだと思うんですよ。今はネット社会ですからキーワード入れれば正しいかどうかは別にしてポンと答えが出たりする訳です。興味を持ち、それを考える。難しい解法に取り組みその過程を理解し、実生活に役立てるってのが必要なことで答えが合ってるかどうかは、その評価の一端でしかないんですよね。
学歴社会が良くないような話しも聞きますが、俺はマイナス面ばかりではないと思っています。勉強ってね一番楽な選択肢の増やし方なんだと思うんですよ。しかも、自分の知的欲求を満たしてくれます。さらには他者との比較により自分のポジションを理解出来ます。
俺のある知り合いの話しです・・・
彼は小さい頃から野球ばかりをしていました。親も彼をプロ野球の選手にすべく厳しい練習を課して、勉強なんかする暇があったらバットを振れと言って育てられました。
彼は高校進学の際に勉強はあまり出来ませんでしたが、野球推薦で高校に入学し、甲子園さえ通過点としか考えていませんでした。
でも、ある日・・・
練習中に大怪我をします。残念ながらそれ以上野球を続けることが出来なくなってしまいました。目標を失い、高校を中退し、悪い仲間が出来て・・・
後は皆さんのご想像にお任せしますが、たぶんその想像は「新しい目標を見つけて、立ち直り幸せな人生を今も送っている」というものではないはずです。もし、そのような想像をするのでしたら、それは楽観的過ぎるでしょうね。実際にそんなことになるのは稀です。稀だからこそそのような人が居た場合、メディアに取り上げられるんです。そう、俺にはもう書けないような人生が彼を待っていました。
何年か振りに彼に会ったときに言っていた言葉があります。
「なんで俺、勉強しなかったんだろ・・・親父は勉強させてくれなかったんだろ・・・」

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